【雑談】ハイブリッドで多角形ポリを横に使いたいという話

ストリング(ガット)

ストリングの張替えを行っている際に、馴染みの生徒さんから質問を受けました。

40代男性<br>上級クラス
40代男性
上級クラス

ハイブリッドで「縦にマルチ系ストリング」、横に「ポリツアーREVかハイパーGソフト」を張ろうと思いますが、どう思いますか?

候補に挙げているポリの2種類はどちらも最近流行りの多角形ポリ。
左(緑色)がハイパーGソフト(Solinco)で右(オレンジ)がポリツアーREV(yonex)です。
5角形と8角形ですが、どちらも角があります。


ハイブリッドの特性を考える

そもそもハイブリッドって!?

まず、ハイブリッドで得られる効果は何かについてです。

元々ハイブリッドは、競技者向けラケットのフェイスサイズが大きくなり(85inch前後 ⇒ 100inch前後)、ナチュラルガットのみで張り上げた場合にパワーがあり過ぎてコントロールが難しくなってきたことから、トッププロがポリエステル系のストリングとナチュラルガットを組み合わせことから普及していきました。(所説あるようですが、個人的にはこれが王道な説だと思います)

これにより、反発性能とタッチ感の優れたナチュラルに、耐久性のある(反発力が少ない)ポリを組み合わせることで、使いやすい性能を引き出したということですね。

つまり、ハイブリッドは「異なる性能のストリングを組み合わせ、単一のストリングではできない性能を引き出す」ことを目的にしたものと言えると思います。

縦糸、横糸の役割って?

一般論として、「どの組み合わせがよいか」を考えるためには、まず縦糸と横糸の役割を把握することが重要です。
※打球感などは感覚で感じ方が千差万別なため、実際に試すことができればベスト。
 ただ、、、製品数が多くてすべて試すのは無理だと思います。

縦(メイン):打球感や飛び、スピン性能といった性能の大部分を担う=影響(性能への寄与度が大きい

横(クロス):主に打球感(ホールド感)に影響を与える。またパワーやスピン性能に関して調整する役割を担う。

ユーザーが「何を求めるか(優先する性能は何か)」によって「最適なストリングの組み合わせ」は変わってきますが、主にはこの性質を理解した上で選択していくことになります。

今回のケースと考察

ハイブリッドを選択する方が理由として挙げるのは以下が多い気がしています。
実際に生徒さんと話しをしていると大概が以下のどれかに該当します。

・ナイロン単一だと耐久性に難がある
・ナイロン単一だと飛びすぎる
・ポリ単一だとパワーが足りない/打球時の負担が大きい

今回の生徒さんは「ナイロンのみだと飛びすぎる&打球感がなさすぎる」ということを言っていました。
ただし、肘を負傷した経験もあるため「肘に優しい組み合わせでなるべく解消したい」ということもあり、打球感に影響の大きい「縦(メイン)」にナイロンマルチのXR3(テクニファイバー)を検討しているとのことでした。
そして、「横」に前述した多角形ポリの2種類のどちらかを検討しており、アドバイスが欲しいと声をかけてくれた状況です。

打感の柔らかさを優先するならば、「縦糸」をナイロンマルチにすることは1つの正解と言えるでしょう。ストリングの種類によって差はありますが、素材としてナイロンマルチがポリより柔らかいのは明白だからです。

多角形ポリを横に使用したナイロンとのハイブリッドの難点

この「縦:マルチストリング 横:多角形ポリ」の組み合わせを実践するうえで、考慮しなければいけないことが1つあります。

それは「耐久性」です。

通常、ストロークを打つと縦糸がズレて戻る動き(スナップバック)が発生します。
それにより回転がかかりやすくなり、ボールの弾く感じも出るわけですが、当然に縦糸は横糸との摩擦で削れます。

横糸が丸い断面のストリングであれば、縦糸の削れ方は緩やかなのですが、今回は「角がある多角形ストリング」です。
角があるため、縦糸の削れが丸型のストリングと比して激しくなります。

例えばですが、真ん丸のビー玉とピラミッド、指で触る場合、どちらが痛いですか?
当たり前に尖っているピラミッドですよね!

ストリングも同じです。
角があるストリングの方が削れる。
さらに今回は、削られる側のストリング(縦)が柔らかいナイロンマルチ。
=耐久性は期待できない

頻繁に張り替える方や、自分で張れるという方は問題ないと思いますが、なるべく長く使いたい、コストを抑えたいという方には勧めづらいセッティングとなります。

まとめると

マルチ系ストリングを縦に使うハイブリッドを考えるなら、耐久性はそこまで望めません。

横糸に多角形ポリを張ろうものなら、良さ以上に耐久性の無さが勝ってしまう可能性もある。
(フラット系であれば削れにくいため切れないという場合もありますが、そういう場合、あまり多角形ストリングを使うメリットもないでしょう)

メリデメを天秤にかけながら、何を優先するかで張るストリングの候補を考えてもらうと良いと思います。

補足~素材により劣化スピードは異なる~

1点補足するとハイブリッドは多くの場合で縦と横でストリングの素材を変えることになります。
「ナイロン×ポリ」とか「ナチュラル×ポリ」といったケースですね。
この組み合わせがある意味でハイブリッドの王道。
各素材のいいとこどりができるからですね。
なので、メーカーが販売しているハイブリッド用のパッケージもこういった組み合わせです。


ただ、気を付ける必要があるのは「素材によって劣化スピードが異なる」という点です。

ここでいう劣化スピードは「耐摩耗性(切れやすさ)」ではなく、「テンション維持性能(伸び方)」です。
もっともテンション維持性能が高いのはナチュラルガットです。
次いでナイロン、ポリと続く。

つまりポリエステル系ストリングの「耐久性が高い」というのは「摩耗に強く切れにくい」ということであり、テンション維持性能は低い。

以前エレメント(Luxiron)のテンション維持性能を記事にしたことがありましたが、かなりテンションが落ちているのがわかると思います。

つまり何が言いたいかと言いますと・・・

「単一素材で張るよりも張り上げ時の打感を維持できる期間は短い」ということです。
縦と横で緩み方が違うので打感の変化も早く出てきてしまいます。

それがハイブリッドのデメリットの1つですね。

このあたりも考慮しつつ、ベストなセッティングを探すしかありません。
気長にさがしていきましょう!!

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